少年野球で代走を出すかどうかの決め方。盗塁の数字だけでは決まりません
終盤の同点。ランナーが出た。その子は足が速くない。ベンチには足の速い子がいる。
代走を出しますか。
「足が速い子に替えればいい」で決められるなら、迷う場面ではありません。実際には迷います。代走は、走者を替えるだけの交代ではないからです。
この記事では、代走を出すかどうかを決める順序を書きます。
結論:順序がある
条件を同時に考えると決まりません。順番に見ます。
- 交代したあと、守備が成立するか
- その子に、次の打席が回ってくるか
1が満たされなければ、2を見るまでもありません。代走はまず守備の話で、走塁の話はその後です。
盗塁の数字が効くのは「誰を代走に出すか」であって、「出すかどうか」ではありません。ここを混同すると判断を誤ります。
第1条件:守備が成立するか
代走を出すと、その子はベンチに下がります。守っていたポジションに、誰かを入れることになります。
ここで問題になるのが、ポジションによって替えの効きやすさが全く違うことです。
外野なら、控えの子を入れても大きくは崩れません。内野は少し難しくなります。そして捕手は、突発的に替えが効きません。
経験のない子をいきなり捕手に据えるのは、悪手にしかなりません。投球を止められなければ走者が進み、送球ができなければ盗塁を防げない。代走で1つ先の塁に進めた分が、裏の守備で簡単に失われます。
つまり捕手を代走に出すという選択肢は、次の守備がある限り存在しないということです。投手も同様です。
裏を返すと、次の守備がない場面では、この条件が消えます。 ここが判断の分かれ目になります。
第2条件:次の打席が回ってくるか
守備が成立するなら、次を見ます。
代走で失うのは、その子の打席です。チームで一番出塁率の高い子を下げれば、次の打席で塁に出る可能性を捨てることになります。
ただし学童野球は6イニング制で、時間制限もあります。終盤なら、打順が一巡する前に試合が終わることが多い。 その場合、下げても失うものはほぼありません。
延長でタイブレークに入る場合も同じです。打順は前の回から続くので、6回裏に打席を終えたばかりの子に、7回で打席が回ってくる可能性は低い。
3つの場面で考える
架空の設定で見ていきます。以下の選手名と数値はすべて架空のものです。
守っている9人
| 打順 | 選手 | 守備 |
|---|---|---|
| 1 | 中村 | 二塁 |
| 2 | 小林 | 遊撃 |
| 3 | 加藤 | 投手 |
| 4 | 田中 | 捕手 |
| 5 | 吉田 | 一塁 |
| 6 | 山本 | 三塁 |
| 7 | 渡辺 | 左翼 |
| 8 | 伊藤 | 中堅 |
| 9 | 高橋 | 右翼 |
走者になるのは田中(4番・捕手)。出塁率.420でチーム1位。盗塁は3回試みて成功ゼロ、牽制死1
控えは3人
| 選手 | 走塁 | 守備 |
|---|---|---|
| 鈴木 | 盗塁5回中4回成功、牽制死ゼロ | 外野のみ。失策は少ない |
| 佐藤 | 盗塁の記録なし | 内野も守れるが失策がやや多い。捕手の経験なし |
| 山田 | 盗塁2回中1回成功 | 守備経験が浅い |
場面1:5回裏/同点/二死一塁/時間制限で次の回に入らない可能性が高い
鈴木を代走に出します。
この回が最後の攻撃になる可能性が高い。つまり次の守備がありません。 捕手がいなくなる問題が発生しないので、第1条件が消えます。
二死一塁では、田中の足では単打で還ってこられません。鈴木なら還れる可能性が出ます。失うものがなく、得るものがある。迷う場面ではありません。
場面2:6回表/1点ビハインド/無死一塁/裏の守備が確実にある
出しません。
裏の守備が確実にあるからです。田中を下げると捕手がいなくなります。鈴木は外野のみ、佐藤は捕手の経験なし、山田は守備経験が浅い。捕手を務められる控えがいません。
1点を追う場面で点が欲しいのは確かですが、取った1点を裏で失えば意味がありません。 ここは第1条件で止まります。
場面3:4回裏/同点/一死一塁/まだ打順が一巡する
出しません。
理由は場面2と同じで、残り2イニングの守備で捕手がいなくなるほうが問題だからです。
チーム1位の出塁率を持つ田中の打席がもう一度回ってくる、という点も理由になりますが、そちらは副次的です。 守備が成立しない時点で、打席の話まで進みません。
この判断のために必要な準備
3つの場面を見て分かるとおり、判断そのものは試合中の数秒で決まります。難しいのは、判断に必要な材料を持っているかどうかです。
必要なのは次の3つで、すべて試合前に用意できます。
1. 控えが誰で、どのポジションを守れるか
特に捕手を務められる子が何人いるかは、試合前に把握しておく必要があります。ここが1人しかいないチームは、采配の選択肢がずっと狭いままになります。
2. 誰が走塁に強いか
盗塁の成功と失敗、牽制死の数を見ます。学童野球は投手のクイックや捕手の送球が難しいため、盗塁の成功率は高くなりやすい。その環境で失敗している子や牽制死が多い子は、走塁に自信がないことの裏づけになります。
集計の方法はこちらに書きました。
→ スコアブックの集計方法。試合前に頭に入れておく6つの数字
3. 誰を代走に出したら、守備をどう組み直すか
これを試合中に考えるのは無理です。「この子を代走に使ったら、守備はこう動かす」まで先に決めておく必要があります。
よくある質問
足が速ければ代走に出していいのですか?
足の速さは「誰を出すか」を決める材料です。「出すかどうか」は守備と打順で決まります。速い子がいても、守備が成立しなければ出せません。
外野手が走者なら、判断は変わりますか?
変わります。外野は控えで埋めやすいので、第1条件をクリアしやすい。同じ場面でも、走者が捕手か外野手かで答えが変わります。
代走を出すと、控えが1人減ります
そこも計算に入れてください。延長に入ったとき、守備固めに回せる子がいなくなる可能性があります。控えが少ない試合ほど、代走は慎重になります。
盗塁の数字が少ない子は、どう判断しますか?
試行回数が少ないうちは判断できません。盗塁3回で成功ゼロは「走塁が苦手」と言い切れる数ではありません。シーズンを通して溜まってから見てください。
出場機会との関係
代走は、出場機会を増やす手段としても機能します。守備だけ、打撃だけで出す枠を作るのと同じ考え方です。
ただし情で出す交代ではありません。 その場面で勝つために出す。結果として出場機会も増える、という順序です。
捕手については別に書きます
この記事で何度か出てきたとおり、捕手は突発的に替えが効かないポジションです。経験のない子をいきなり据えるのは悪手にしかなりません。
そして捕手を何人育てているかは、代走だけでなく守備固めや全員出場の判断にも影響します。これはシーズン全体の育成方針の話なので、別の記事にまとめます。