少年野球のスコア集計のやり方。試合前に頭に入れておく6つの数字

終盤の同点。ランナーが出ました。

ここで代走を出すか、出すなら誰か。10秒で決められますか。

決められないとしたら、選択肢は2つしかありません。何もしないか、感覚で出すか。どちらも「長年の経験と感覚」による采配です。そしてこの場面は、試合の中で最も1点に近い場面です。

スコアブックの集計は、この10秒のためにやります。試合後の振り返りのためではありません。次の試合の準備です。

集計のやり方(先に結論)

手順だけ知りたい方は、ここだけ読んでください。

  1. 表を「1行=1打席」で作る。 選手ごとの成績表を直接作ると、試合のたびに手で足し算することになり続きません
  2. 打席の結果は7種類から選ぶだけにする。 安打・四死球・見逃し三振・空振り三振・凡打・相手失策で出塁・犠打
  3. 集計は COUNTIFS などの数式に任せる。 一度入れれば、打席を追記するだけで全部の数字が更新されます

具体的な表の形と、そのまま使える数式は集計の手順にまとめています。その前に、なぜこの6項目なのかを説明します。

集計した数字は、紙で持ち込むものではない

先に運用の話をします。

試合中、ベンチでパソコンを開くことはできません。スマホで表を見るのも現実的ではない。だから集計した数字は、試合前に頭に入れておくものです。

全部は覚えられない、という場合は紙に印刷して持つ形でも構いません。ただそれも監督が自分で持つのではなく、スコアラーに渡して役割として任せるほうが、チームとして機能します。大人も一緒に戦っている形になるからです。

いずれにしても、試合が始まる前に数字が出ていなければ意味がありません。 集計は前日までの作業です。

頭に入れる6つの数字

項目 試合中の何に効くか
打席数 出場機会が偏っていないかの確認
出塁数(安打+四死球) 終盤の代打を誰にするか
見逃し三振 見逃しだけは避けたい場面で誰を避けるか
空振り三振 見逃しとの内訳を分けて見る
盗塁の成功・失敗・牽制死 代走を誰にするか
守備イニング数と失策数 終盤に守備固めを出すか

打点、犠打、長打率、残塁は集計しません。見ても試合中の判断が変わらないからです。 集計は続かないと意味がないので、判断に使わない項目は最初から捨てます。

三振を2つに分ける理由

見逃し三振と空振り三振を分けるのが、この6項目で一番重要な点です。

三振の数だけ見ていると、両者は同じ「打てなかった打席」になります。でも中身は違います。見逃し三振が多い子は、ボールを怖がって手が出ていない可能性があります。

これは試合中と試合後の両方に効きます。試合中は、見逃しだけは避けたい場面でその子を代打に使わない判断ができる。試合後は、恐怖心を取る練習が必要だと分かる。

三振を1つにまとめていると、この区別が永久に見えません。

盗塁を捨ててはいけない理由

学童野球では、投手のクイックや捕手の送球が難しいため、盗塁の成功率はかなり高くなります。

だからこそ、そこで失敗している子や牽制死が多い子は、走塁に自信がないことの裏づけになります。成功率が高い環境で失敗しているという意味なので、情報としてはっきりしています。

これが代走の判断に直結します。終盤の同点で塁に出たのが走塁に自信のない子なら、走塁の数字が良い子を代走に出す。一つ先の塁まで行ければ点が入ります。

これは情で出す交代ではなく、勝つために出す交代です。 出場機会と勝ちが同じ方向を向く、数少ない場面です。

→ 全員出場と勝利を分ける3つの着眼点

出塁に相手の失策を含めない

出塁数は安打と四死球だけで数えます。相手のエラーで出塁した打席は含めません。

その子の力では説明できない出塁だからです。代打を誰にするかの判断に使うので、次も再現できる出塁だけを数えます。

ただし記録自体は取っておいてください。足の速い子は相手の失策を誘発しやすいので、蓄積すると別の傾向が見えることがあります。

守備は「1イニングあたりの失策数」で見る

守備は、守ったイニング数を分母にします。

1イニングあたりの失策数 = 失策数 ÷ 守備イニング数

一般的な守備率は守備機会(刺殺+補殺+失策)を分母にしますが、学童野球で打球数を毎回記録するのは現実的ではありません。 イニング数ならメンバー表の交代欄から追えるので、追加の記録がほぼ発生しません。正式な守備率とは別物なので、名前も分けています。

この数字の使い道は一つだけです。明らかに失策が多い子がいるとき、終盤リードしている場面で守備固めを出す判断に使います。

そして、ここは誤読しやすいので注意が必要です。

守備の適性は、数字では決まりません

打球が来ない位置で6イニング守った子は、失策ゼロになります。数字上は最高です。一方でショートで多くの打球を処理して1つ失策した子は、数字が悪くなる。この2人を同じ数字で比べると、完全に誤読します。

さらに根本的な問題があります。ショートバウンドの処理が苦手な子に一塁は任せられない。速い打球を怖がる子に三塁は無理。こうした向き不向きは、失策数には現れません。 失策になる前に、そもそもその位置に置かれないからです。

守備位置の適性は、見て判断するものです。数字は「守備固めを出すか」の判断にだけ使ってください。子どもの守備能力を評価する道具として使うと、害になります。

集計の手順

1行を1打席にする

多くの人が最初に作るのは、選手を縦に並べて成績を横に書く「成績表」です。これは失敗します。試合が増えるたびに手作業の足し算が発生するからです。

1行が1打席の表を作ります。

日付 相手 選手 打順 結果 方向 盗塁
9/13 ○○ジャイアンツ A 1 安打 右 成功
9/13 ○○ジャイアンツ B 2 見逃し三振 ー なし
9/13 ○○ジャイアンツ C 3 四死球 ー 牽制死

結果に入れるのは7種類です。

  • 安打 / 四死球 / 見逃し三振 / 空振り三振 / 凡打 / 相手失策で出塁 / 犠打

方向は左・正面・右の3つだけ。引っ張りか流しかが分かれば十分で、三遊間か左中間かまでは追いません。

プルダウンにしておくと入力が速くなります。スプレッドシートなら「データ」→「データの入力規則」でリストを設定できます。

集計は数式に任せる

別シートに選手名を縦に並べて、次の式を入れます。データ側のシート名を 打席 としています。

打席数

=COUNTIF(打席!C:C, A2)

出塁数(安打+四死球)

=COUNTIFS(打席!C:C, A2, 打席!E:E, "安打") + COUNTIFS(打席!C:C, A2, 打席!E:E, "四死球")

見逃し三振

=COUNTIFS(打席!C:C, A2, 打席!E:E, "見逃し三振")

盗塁成功

=COUNTIFS(打席!C:C, A2, 打席!G:G, "成功")

一度入れれば、打席シートに追記するだけで全部が更新されます。手で足し算する場面が二度と来ません。

守備イニング数だけは打席と別軸なので、選手ごとに手入力する欄を作ります。1試合につき人数分の入力で済みます。

ここまでで集計はできますが、試合前に見るときは「代打は誰か」「代走は誰か」を毎回目で探すことになります。人数が増えるほどここが手間になるので、候補を自動で並べる形にしたシートを別に用意しています。出塁率の上位3人、見逃し三振が多い3人、盗塁の数字が良い3人が、そのまま出るようにしたものです。準備ができたら公開します。

所要時間を測ってから続けるか決める

学童野球は6イニング制で時間制限もあるため、自チームの打席数は1試合20〜30程度です。プルダウン入力なら、慣れれば5分前後で終わる分量だと思います。

ただしこれは目安です。最初の3試合は所要時間を実測してください。 15分かかるなら項目が多すぎるので、さらに削ります。正確にやることより、来年も続いていることのほうが価値があります。

よくある失敗

過去のスコアブックを遡ろうとする

やめてください。溜まった分を入力しようとして力尽きるのが一番多い失敗です。今日の試合から始めて、過去は捨てます。

完璧な記録を目指す

記号や細かい打球位置を残したくなりますが、それを見て判断を変える場面は来ません。判断に使う数字だけを残します。

個人の順位表にして配る

打率順に並べた表を配ると、子どもと保護者の両方が傷つきます。名簿順に並べて、前回との比較で見せてください。

試合中に使う紙を配っています

集計した数字は試合前に頭に入れますが、試合中に必要になる情報がもう2つあります。クーリングタイムを除いた打ち切り時刻と、まだ出場していない子です。この2つは公式スコアブックに記入する欄がありません。

そこで、この2つだけを書き込める紙を作りました。上半分は監督が試合前に記入してスコアラーに渡す欄、下半分は試合中に書き込む欄です。公式スコアブックに挟んで使えるA4の1枚です。

無料で配布しています。印刷すれば次の試合から使えます。

→ 試合シートをダウンロード(PDF・A4 1枚)

書く欄を増やさない設計にしています。打者ごとの成績や球数のマス目は入れていません。公式スコアブックに既に書いてあるものを、二度書かせないためです。

集計の次にあるもの

数字が出たら、次は試合中にそれを使う番です。

ただ、監督が全部を覚えるのは難しく、試合中に聞かれて答えられるスコアラーがいるかどうかで運用が変わります。記録係を分析係にするという話は、別の記事にまとめます。

→ 少年野球のスコアラーは誰がやるべきか(準備中)